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12月19日。

二人の死刑囚の死刑が執行された。

そのうちの一人は、1992年3月に起きた事件の犯人だった。

『市川一家4人殺人事件』

という通称で知られている。

当時、犯人は19歳の未成年。

わたしは、記者になって半年で、

結婚の2ヶ月前だった。

 

記者になって初めて担当させられた事件で、

事件発覚から被害者家族の葬儀が行われた当日まで、現地で取材を行った。

 

今思い出しても、

この少年の犯した罪は、

想像を超える筆舌に尽くし難いものだった。

 

概要をかいつまんで書く。

 

少年Aは、その当時19歳にして、それまでに暴行罪や強姦致傷罪で2度の逮捕歴があった。実家は市川でうなぎチェーン店を営っており、Aが働いていた駅前店は美味しくて評判の店だった。Aは事件の1ヶ月前、客として入ったスナックでホステスのフィリピン人女性を連れ出し、性的関係を持った。そのままその女性を監禁し負傷させる。フィリピン人女性は店の関係者に訴え、店は暴力団に「落とし前」を依頼する。Aは暴力団から200万円を請求され、追い込まれる。

その2週間後、Aはたまたまコンビニで当時高校一年生だった15歳の長女を見かける。彼女を拉致して強姦。この時、生徒手帳から自宅の住所、電話番号をメモっていた。

事件当日、Aは長女の家に押し入ることを計画。家で一人で留守をしていた祖母を首を絞めて殺害。家にあった現金を奪う。Aは、これから帰宅する家族も脅して現金を奪おうと考え、そこから逃亡するのではなく居座りを決める。帰宅した長女とその母を包丁で脅し、長女の目の前で母親を滅多刺しにして殺害。保育園から保母に連れられて帰宅した4歳の妹を別部屋で寝かしている間に長女を強姦。その最中に帰宅した父親も包丁で刺し、動けなくてしてから通帳、金のありかを聞き出す。そして、父親を殺害。その後、目を覚まし、泣き叫ぶ次女を包丁で刺して殺害した。

そこから警察が駆けつけるまで家族の遺体が横たわる側でなんども長女は強姦された。

警察が踏み込むと、Aは長女に包丁を持たせ、共犯を装った。

Aは当初、長女との共犯をほのめかすような供述をしたため、警察は長女も共犯の疑いありとして取り調べをしていた。テレビもあたかも長女が共犯者のように報じた。

 

数日後に執り行われた葬儀には長女がいた。

わたしも葬儀に参列した。

遺族側と参列者が向かい合うように座り、最前列に座っていた長女は、向かいの最前列に座っていたわたしと3メートルほどの距離を開けて向かい合った。

学生服を着て、少しうつむき加減だったが、表情は全くなかった。

目はしっかりと開いていたが、瞬きすらしていないように見えた。

葬儀の間、一度も口を開くことはなかった。

 

担当編集者と二人で参列していて、当初の予定としては、

葬儀と長女の写真を撮り、可能であれば彼女に声をかける手はずになっていた。

そのころには、長女が一番の被害者であると認識されていたが、

まだ、情報が全て出尽くしたわけではなかった。

だから、とりあえず、彼女の写真を撮っておこうとなったのだ。

しかし、葬儀の彼女の姿を見たわたしは、

「やっぱり僕にはそんなことできません」

そう言うと、担当編集者も、

「そうだね。できないね。違うな。やっちゃいけないね」

そう言った。

 

 

葬儀終了後、関係者に促されるように会場を後にしたが、

表情はまるで蝋人形のように全く動かなかった。

 

今思い出すだけで胃がキリキリと痛む。

 

あの時、彼女を目の前にしてこう思った。

 

彼女はこの先どうなるんだろう・・・・。

 

わたしは、彼女の人生に自分を重ねて考えた。

 

考えても理解なんてできない。

ただ、

わたしだったら、狂う。

狂った方が楽だ。

 

 

その後、わたしは『SMクラブ下克上殺人事件』(1995年)など、死刑判決が言い渡された事件をいくつも取材して来たが、この事件の衝撃を超えるものは未だにない。

 

その犯人の刑が12月19日に執行された。享年44。

被害者の父親は、42際で殺害された。しかも母親、妻の遺体の横で、長女の目の前で。

 

今、わたしはこの歳になって、父親の立場で考える。

 

家族を誰一人として守れなかった父親の気持ちを。

 

その無念さを思うと、

また胃がキリキリと痛む。

 

でも、想像するに、彼は、

息を引き取るその寸前まで、

まだ生きている二人の娘を必死に守ろうとしたに違いないのだ。

 

 

その長女は、その後、大学を卒業し、結婚し、両親の夢であった海外で生活をしているという話だ。

彼女は自分の力で自分の人生を必死に守っていた。

 

すごいと思う。

 

 

「俺がお前たちを守るからな!」

 

 

 

口にするのは簡単だ。

 

 

「僕が君を守るから。もう大丈夫」

 

口にするのは簡単だが、

果たして、

わたしは、

どんな状況下でも、守るべき人を守れるのか?

 

では、

 

「守る」

とは、なんなのか?

 

もっと深く掘り下げて、

次回は、

「守る」

について考えて見たいと思う。

 

最後まで読んでくださってありがとうございました。