序章 いま、できる最高の結果を残すために

2017年11月22日

俺の体、どう動くの?

 

東京地方裁判所からターゲットをワゴン車が出てきました。

車線は真ん中の直進レーンです。

わたしは車を発進して真ん中のレーンを走り始めます。

ワゴン車より20メートルほど先を走ります。

予想通り、ワゴン車の両サイドの車線にはゴープロをヘルメットにつけたバイクが並走しています。その後ろにはバイクの集団。その後方を車の集団が付いてきているのだろうけれど、全く見えません。

車はそのまましばらく直進します。

道は、全く混んではおらず、空いていましたが、時速は30~40キロ。

制限速度、もしくはそれ以下のスピードで緊張して慎重に運転している雰囲気が伝わってきます。

途中、信号待ちになれば、ワゴン車の前に我々の乗る車が止まるような形になるので、

フロントガラス越しに運転手、助手席の人物がよく見えます。

彼らはまっすぐ前を見据え、会話をしている様子はありません。

表情も全く変わりません。

後部座席との間にはカーテンが引かれているので本人の姿は全く見えません。

信号が青になり、前方の車から順々に走り出します。

我々の車が動き出し、ワゴン車が動き出す。20台ものバイクの発進音が響き渡ります。

「この車列をこの角度から見ているマスコミって我々だけだよね。写真撮っとこう」

ワゴン車を先頭に後続に何十台ものバイクとカメラが車列をなして続いている。

確かに、日常ではありえない異様な光景でした。

その写真は、まるで、ワゴン車が走る道路を予測していたかのような場所にカメラを設置して撮ったと思えるほどのクオリティでした。

そして、わたしの後ろでずっと後方にカメラを構えているカメラマンから声が飛びます。

「左ウィンカーが点きました!」

100メートルほど先には大きな交差点があります。

やはり、かなり早めにウィンカーを点けたのです。

わたしは車線変更をして左折レーンに入ります。

その遥か後方でワゴン車も左折レーンに入りました。

大通りを左折すると大きなホテルがあります。

しかし、そこに入るとは思えません。

なぜなら、そこに入るためには歩道を横切らなくてはなりません。大通りの歩道には普段からかなり多くのビジネスマンが往来しています。

もし、そこに入ろうとすれば、最後の最後の局面になるので、

後続のバイクや車が我先にと危ない運転をする可能性もあります。

人通りが多すぎるので、やはり危険だと考えるはずだからです。

だからわたしはそのホテルを通過しました。

もし、そこに入られたら終わり。

わたしの乗る車はいち早く脱落したことになります。

でも、一か八かの局面なのです。

瞬時の判断。

と、いうよりも、

俺の体、どう動くの?

に任せるしかないのです。

そして、直進したことによって、

なるほど、そっちか。

頭が少し遅れて理解する。

そんなイメージです。

 

ワゴン車は予想通り、ホテル前を通過しました。

 

しかし!

 

ホッとしたのも束の間でした。

 

欲が判断を遅らせる

 

そうだったぁ!!

 

ホテル前を通過するとその先で3つの通りに枝分かれするのです。

直進すれば高速の入り口があり、左に曲がれば繁華街に入ります。左折すれば、高層マンション群エリアです。

 

「左折だ!」

そう思いましたが、わたしは車を左に寄せて路肩に止めました。

「降りますか?」

カメラマンがそう聞きます。

つまり、

「目的地が近いということですね。走って追いかけますか?」

そういう質問でした。

「いや!待つ」

わたしの一瞬の迷いでした。

ここまできて失敗したくない・・・。

 

欲が無欲に勝った瞬間でした。

 

欲が一瞬の判断を遅らせたのです。

 

時すでに遅し。

その会話の間にワゴン車はすでにわたしの横に並んでいました。

左ウィンカーを出しています。

わたしは車を発進し、左ウィンカーを出してカーブに入った瞬間にすぐにワゴン車の後ろに付くことができました。

これは、わたしの実力でもなんでもありません。

 

 

ほとんどのバイクがわたしに譲ってくれたのです。

 

それは、路駐していたわたしの車をマスコミの車だとは思っていないからです。

 

バイクの一団が一般車の迷惑にならないように譲ってくれたから、ワゴン車のすぐ後ろにつけることができたのです。

 

今、できる最高の結果だと納得する

 

しかし、2台のバイクだけは先行しました。

ワゴン車、2台のバイク、そして我々の車。

目的地まではあと少し。

ワゴン車は人通りの少ない道を進み、すぐ左にある大きなマンションの地下駐車場ではなく、車寄せに入りました。

2台のバイクはそのまま中に突っ込みます。

わたしは入り口手前で車を止め、

「行って!」

カメラマンは後部座席をあけ、飛び出して行きました。

前方でワゴン車の後部座席から元野球選手が降りる横顔が見えました。

わたしの後ろからたくさんのカメラマンがなだれ込むようにマンションエントランスに向かって走って行きます。

カメラマンが戻ってきました。

「どう?」

「たぶん本人だと思うんですけど、後ろ姿しか撮れませんでした」

「バイク2台はどう?」

「たぶん、同じように後ろ姿しか撮れてないと思います」

「その後ろのカメラマンたちは?」

「撮れたのはバイク2台とわたしだけだと思います。他は間に合ってないと思います」

「まあ、よしとするか」

「すみません。もっと早く車から出ていればよかった」

「いや、あれが精一杯だよ。最後の最後で一瞬迷って停まったのがよくなかった。あのまま先行して曲がっていたら、ワゴン車から降りる瞬間を撮れたかもしれない。俺のミスだよ」

「残念ですね」

100パーセントを求めすぎたら、必ず無理が出る。無理が出たらどこかで失敗する。この場合、事故が起こる。だから、この結果で十分なんだよ。これが我々にできる最高の結果だった」

 

結果、

ターゲットの姿を撮影することができたのは3社のみでした。

バイク2台はテレビ。

新聞は0。

雑誌は我々の1社のみです。

 

紙面は彼の後ろ姿と彼を乗せたワゴン車を前方から撮影した写真の2枚で構成されました。

 

今できる最高の結果を残すために、

 

どう考え、どう動く?

 

動くために日頃からどう意識する?

 

それは、あなたが考えることです。

 

少しでもご参考になったでしょうか?

 

さて、次回は、

 

『パワハラ上司にはこう対処しろ!』

これも、わたしの経験から学んだお話です。

最後まで読んでくださってありがとうございました。